「夏祭浪花鑑」は上方歌舞伎らしい義理、人情のもつれから起きる義父殺しが最大の見せ場。海老蔵が好演しているが東京弁のセリフはいただけない。義平次を演じた市蔵は関西弁は完璧、しかも団七をねちねちと口汚く責める様子がいい。
大詰めの義父殺しの場面が長く、くどいのは上方歌舞伎特有なのだろうか。そういえば先月の「女殺油地獄」も、殺害シーンがくどかった。殺す方にも、殺される方にもそれなりの理由がある。我慢に我慢を重ねた末に殺人を犯してしまった団七の心情風景は、上方では藤山寛美へ継承されたようにも思えた。
玉三郎の「天守物語」は緞帳で幕が開いた。歌舞伎ではないという意思表示であろう。
舞台美術は斬新で、随所に工夫が凝らされていて秀逸だが、背景のプロジェクター映像がチープである。もっと解像度の高い機種を選定すべきであった。また音楽もライブでないのが残念。
海老蔵の演技は抑制が利いていて、なかなか好感がもてる。玉三郎はいつも通り美しさと悲劇性が同居した好演。しかし最後に登場する我當の役回りが少しわかりづらいように思えた。
昼の部は公演時間が通常より1時間ほど短かったと聞いた。夜はちゃんと9時終了。夜の部にして正解であった。
歌舞伎座さよなら公演 七月大歌舞伎 〜夜の部〜
○夏祭浪花鑑 海老蔵/勘太郎/猿弥/春猿
○天守物語 玉三郎/海老蔵
(1階20列で観覧)
0 件のコメント:
コメントを投稿